ウッドショックは終息したのか
これまでも何回かブログでも書いたことがあるウッドショックについてですが、コロナ禍からの落ち着きによる需要回復で住宅着工戸数が増加したことや、2月末のロシアによる「ウクライナショック」と呼ばれるウクライナ侵攻に対しての経済制裁で、ロシア産とベラルーシ産の木材に対しての認証を停止したことにより、需給がひっ迫して価格が高騰していました。
では現在はどうなのか見てみたいと思います。
✔輸入価格の動向
コロナ禍でのボトルネックから価格は高騰を続けた来ましたが、2022年に入り高水準で推移しているもののややピークアウトした感があります。
住宅需要が高まっているアメリカでは近年、新築住宅を建てる中心世代である25〜44歳の人口が増加傾向にあり、住宅減税を継続して価格高騰分を吸収していることから、いまだに根強く需要が伸びています。 しかしインフレを抑えるべく金利引上げに伴う住宅市場への影響など、今後世界市場の動向からは目が離せない状況となっています。
✔国内価格の動向
足下の輸入価格は低下基調にあり、それに伴い国内価格は概ね横ばい推移しています。このことから、製材は、輸入価格上昇の影響が国内価格に一定程度反映されたと言えるでしょう。
輸入材と国産材や、製材と他素材とでの代替の動きなども進展したと考えられます。今後は、住宅設備等の建材価格の上昇も生じており、住宅需要の動向などが注目されます。
集成材は、国内材での代替が困難などの事情もあって、国内価格がより大幅に上昇していたことが伺えます。集成材の輸入価格は、高水準で横ばい推移しており、今後も輸入価格と概ね同様の動きをしていくとみられています。
ちなみに国内の在庫は東京港の6月末輸入木製品在庫が19万2483立方メートルと年初来の最高に達しているそうで、高値は続いているが品薄ではないとのこと。
木材の総在庫量は、ウッドショックが始まる前をはるかに超えて今年2月のボトムと比べると、2.5倍も積み増し状態。
これは何故かというと、ロシア材の輸入がほとんどストップしていないし、アメリカやカナダ、そしてヨーロッパからもどんどん木材が入荷していることがかんけいしているようで、ロシア材に関しては、輸出量の半分以上が中国であり、欧米が輸入をストップしてもあまり影響していないそうで。。。
✔新築戸建住宅取引の動向
気になるのは、日本の住宅着工件数で木造を中心にじりじりと下がり気味。ここ数か月は前月よりマイナスが続いています。
2020年4月に新型コロナウイルス感染症が急拡大した影響で急落した後、拡大前を大幅に上回る水準まで急速に上昇しましたが、夏頃のピーク後は、足下まで概ね低下基調で推移し、新型コロナウイルス感染症で急落した水準を割り込むまで低下しています。
今後は、住宅設備や木材以外の建材等の価格上昇などとも相俟って、新築戸建住宅の取引需要が一定程度抑制されている可能性が伺えます。
✔まとめ
日本国内で2021年春頃から話題となり始めた、いわゆるウッドショックは、当初のほぼ全面的な価格上昇という局面から、木材・丸太の種類などに応じた需給バランスのとれた価格形成を探る新たな局面に差し掛かっているとみた方が良いでしょう。
在庫がだぶついているうえ、あらゆる材料の価格高騰で建築件数は下落基調で木材需要も縮んでいることを考えれば、今後木材価格は下落する可能性は高いですし、ひょっとするとウッドショック前の価格まで落ちるか、もしかして以前の価格を割り込んで下落することもあるかもしれません。
価格が安くなっても住宅需要は簡単に回復しなれば、増産に舵を切り始めた国内の林業家や木材の流通業界は、元が取れないなんてこともあるかも・・。
とりあえずはまだまだ価格は高止まりしていく公算なので、国内生産業者はうまく需給のバランスを見ながらやっていかなくてはなりませんね