未来の車は木で作る時代! 新素材セルロースナノファイバーとは?
昨今、木材がトレンドだとこのブログでもしばしば書いてきました。
世界中で脱炭素社会に向けた機運が一層高まっています。現在 120以上の国で「カーボンニュートラル」を2050年までに達成するべくさまざまな取り組みを進めています。
カーボンニュートラルとは物の生産や人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素を同じ量にする、つまり温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという目標のことです。
日本 では、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を 宣言しました。しかし、この目標は並大抵の努力で実現でき るものではなく、エネルギー・産業部門の構造転換や、大胆 な投資によるイノベーションを大幅に加速することが必要です。
その宣言に先駆けて、日本でもあるエコな新素材が実用化されてきています。その原料は日本人にとても馴染み深いモノです。
今日はそんな新素材のおはなしです。
✔セルロースナノファイバー
「セルロースナノファイバー(CNF)とは植物に含まれる数十nm(ナノメートル)の極細繊維です。
その原料とは日本の国土の7割を占める「木」
木材をチップ化し、次にパルプを特殊な薬品でほぐしナノレベルまで細かくして製造します。 肉眼では確認できないほど細かく、直径は髪の毛の数万分の1ほど。
これを、溶かしたプラスチックと混ぜ合わせてCNF複合プラスチックを成形します。
(日本製紙グループ WEBサイトより)
✔特徴と応用例
セルロースナノファイバー(CNF)の特徴は以下のようなものになります。
1)軽くて強い・・・鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強度がある。
2)大きな比表面積・・・250m2/g以上
3)熱変形が小さい・・・ガラスの1/50程度
4)植物由来である・・・持続型資源であり、環境負荷が小さい。
これらの素材の特徴を活かし、以下のような多分野にわたる製品展開ができると期待されています。
1)自動車材料として
軽量で高強度のボデイ材料、燃費向上など
2)家電製品の部品として
耐衝撃性が優れ、リサイクル容易な軽量筺体材料など
3)建材として
高強度でリサイクル可能な軽量建築材料など
4)包装・容器として
ガスバリア性、耐衝撃性に優れ、環境に優しい軽量容器など
5)塗料として
塗料のチキソ性の付与により塗装性、顔料の分散性の改善など
✔NCV(ナノセルロースヴィークル)プロジェクト
この素材を使用したスーパーカーが2019年の東京モーターショーの環境省ブースで展示され、話題となりました。
来場した小泉環境大臣が、ボンネットを片手で持ち上げて素材の軽さをアピールしてみせたニュース映像を覚えておられる方もいるのではないでしょうか?
NCV(ナノセルロースヴィークル)の大きな特徴は、セルロースナノファイバーを使用して車体を軽量化し、燃費を向上させることで温室効果ガスの排出削減に繋がるというものです。
車体を10%軽量化すれば車両1台当たりのCO2を2000kg削減できるとも言われています。これは日本人1人当たりの年間CO2排出量に相当します。
✔まとめ
我々の建築業界においても、大建工業株式会社はや利昌工業株式会社ではこのセルロースナノファイバー技術を利用した住宅・非住宅用内装建材の開発を行っています。
室内用ドアをはじめ床材や壁材など、内装建材分野における新規用途の開拓により、CNFの大量需要を創出するとともに、建材製造時や資材運搬ならびに施工時を含めたCO2排出量の総合的な削減目指しています。
(大建工業株式会社 WEBサイトより)
現時点ではプラスチックとの混合で実用化を目指していますが、プラスチックに混ぜてしまっては、環境負荷の低さというメリットが半減してしまいます。多種多様な素材との混合を可能にすることで、ライフサイクル全体を通しての環境負荷のさらなる軽減が期待されています。
さらにはまだ従来の素材と競合できるほど安価ではないことから、原材料のサプライチェーンの確立や製品の流通量を一定に保つなどのコストの大幅削減にむけた取り組みも必要です。
しかし、地球温暖化対策マーケットは2050年までには350兆円規模に成長すると言われていますし、この大きなポテンシャルを秘めたセルロースナノファイバーが今後様々な製品がマーケットを牽引していくことは間違いありません。