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CLT材建築が今年のトレンドに! 規模はますます大型化へ!

 

木造建築は、「木のぬくもり」という点から近年注目されてきたが、大きな転換点となったのは政府が「2050年のカーボンニュートラル」をめざすことを表明したことです。

全産業にわたり、脱炭素を進めることになったことで、国は「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を昨年10月1日に施行し、木材利用を促進する対象をこれまでの公共建築物から民間建築物にまで拡大しました。

 

木材建築をより拡大していくために、民間企業の木造の技術開発に注目が集められています。

2021年12月には一般社団法人ウッドデザイン協会も設立されました。会長には建築家の隈研吾氏が就任し、竹中工務店、住友林業株式会社などが参加しています。

国産材等の自然資源を最大限に活かす視点で、特に注目されているのがCLT(直交集成板)です。

過去記事でも紹介したことがあります。 宜しければご覧ください。

 

木材の常識を変えた集成材「CLT」の未来

 


 

✔木造建築は中層規模へ拡大

 

CLTの活用は年々上昇傾向にあり、竣工件数は、2021年度に累計で710件強に達する見込みで、最近では中層建築物の共同住宅、高齢者福祉施設の居住部分、ホテルの客室等に導入されています。

またCLTとRC造のハイブリッド建築により、高層ビルの建築をめざす動きもあります。

今後のプロジェクトとしては、大阪・関西万博日本館でCLTの活用を進めるための取組みが関係省庁の連携のもとで進められており、製造施設の整備をを拡充させ、年間50万m3のCLT生産体制を作る、そしてCLTパネル等の寸法等の規格化や接合方法等の開発・普及などによりコスト削減をめざしています。

 

(内閣府 WEBサイトより)

 

すでに竣工している中規模建築では「銀座8丁目計画」(ヒューリック)、「東洋木のまちプロジェクト」(東洋ハウジング)「大和ビル」(大和興業)、「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」(三菱地所)などがあり、特に三菱地所の「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」は昨年10月1日に、札幌市・中央区に開業、国内初の木造とRC造を組み合わせた高層ホテルとして注目を浴びました。

 

「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」の構造躯体は木材使用量約1,060m3(外装材等も含めると約1,200m3)となり、そのうち8割強が地元の北海道産⽊材を使用して地産地消に貢献。CLTは床材に採用、構造躯体に使用する木材量は国内最大規模となり、建物全体をRC造とした場合と比べ約1,380tものCO2抑制に成功しました。

 

CLT建築は大手企業だけではなく、地域工務店でも積極的に始まっています。千葉県鎌ケ谷市に本社を置く、株式会社東洋ハウジングは、CLTパネル工法による14層(1階RC造)の15階建て店舗・事務所併用の高層共同住宅「東洋木のまちプロジェクト(高層棟)」を始動し、今年10月ごろの竣工を予定しています。

 

(内閣府 WEBサイトより)


 

✔CLT普及への課題

 

しかしながらCLT材建築の普及には課題も多いことは否定できません。

・コストの問題・・・CLT材はRC造やS造と比較すると、コストがかかります。特に、2021年は「ウッドショック」があり、建材が高騰しました。

耐火関連の法規制・・・耐火時間を定めた建築基準法施行令では15階以上は、3時間の耐火性能を求めている点も高層化が進まない理由の一つ。

CLTの設計者と施工者の担い手不足・・・設計式の難しさや解析モデルの複雑さ、竣工後の維持管理に関する情報不足が受注の障害になっているとも言われています。

 

(一般社団法人 日本建設業連合会 WEBサイトより)


 

✔まとめ

 

古くからの相場格言に「国策に売りなし」と言われるように、政府が旗を振る政策には予算が付いて、人や会社が動き、やがて社会が変わっていくものです。こうした社会の変わり目をビジネスチャンスとする企業は確実に増えてきています。

事実、政府は国策としてカーボンニュートラルの実現に向け、炭素貯蔵効果が期待できる木造建築を積極的に推進しています。国土交通省はサステナブル建築物等船頭事業と銘打って構造・防火及び生産システムの面で先導的な設計・施工技術の普及と低炭素社会の実現に貢献するため、先導的な技術を導入した木造の住宅・建築物のリーディングプロジェクトを支援することを予算案に盛り込みました。

上記に挙げた様々な課題は今後少しずつ解決されていくと思われます。

今年はCLT建築から目が離せない年になりそうです。